では私たち精神科医が捉える、人格の成熟の「指標」とはなんでしょうか? 精神科医の斎藤環先生(※1961年生まれ。筑波大学医学研究科博士課程修了、医学博士。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学)は次の2点をあげています。
・ストレスに耐えて葛藤を克服できる能力
・相手の感情を感じて自分の感情を適切にコントロールできる能力
これらは、小学生時代から高校生くらいまでの思春期前後に、親子関係や友人関係における精神的葛藤体験の克服から獲得されてきます。
ところが最近では、母親の溺愛と過保護、同年齢同士の交友関係の希薄化により、いわゆるギャングエイジと呼ばれる精神的な成長の時代に「人にもまれる」という経験をせずに、進学塾などで優秀に純粋培養されて成長した若者が増えています。
このようなこどもたちは、友人とのケンカや争い、つまり葛藤状況に慣れていませんから、自分の辛さを乗り越えて、落としどころを見つけ折り合いをつけるスキルを持っていません。また、このことで相手がどの程度傷つくかなど理解できませんから、自分の気がすむまで、ひたすら主張を通します。もしどうしても上手くいかない場合は、お母さんが助けて保護してくれました。
このように育った彼らは、現代の厳しい労働環境で人と協調して社会生活を営むには、あまりに未熟なのです。会社で困ったことがあっても、泣きつくお母さんがいない、腹を割って話す同僚がいない彼らは、どうしたらいいかわからなくなるのです。